カルスト地形

カルスト地形とは、岩石が雨水や地下水に溶食されることによってできる特殊な地形(穴や奇岩)の総称である。

岩石

カルスト地形が生じるためには、雨水や地下水に溶かされやすい岩石がなければならない。そのような岩石の代表的なものとして、「石灰岩」がある。石灰岩は炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とする岩石で、雨水などの二酸化炭素を含んだ水(=炭酸)と反応し、水溶性の炭酸水素カルシウムとなる。化学的には下式で表される。

CaCO3 + CO2 + H2O → Ca(HCO3)2
(厳密には生成物の炭酸水素カルシウムは水中でイオン化している)

なお、上式では矢印は右向きであるが、水が蒸発すると左向きの逆反応も起こる。この逆反応は鍾乳石の形成プロセスに関連している。

カルスト地形は炭酸塩岩である石灰岩によるものが圧倒的に有名であるが、それ以外の炭酸塩岩(例えば苦灰岩)や、岩塩や石膏などの蒸発岩(水中成分が析出してできる岩石)に対しても形成されうる。

ドリーネ・ウバーレ・ポリエ

ドリーネ・ウバーレ・ポリエはいずれも岩石の地面が溶食されてできた穴の名前である。これらの違いは、単純に言えば大きさであるが、原則としてドリーネ→ウバーレ→ポリエの順に形成されていくということにも留意しなければならない。

まず、ドリーネは単純なカルスト凹地形(穴)を指す。地面が雨水などによって溶食されてできる溶食ドリーネのほか、陥没ドリーネ(後述)、沖積ドリーネなどの種類がある。形はすり鉢状とよく言われるが、多少のバリエーションはあり、逆にした円錐のように底がとがっているものから、ガラスコップのように底が広く平らなものまである。ただ、上から見ると円に近い形をしていることが多いようだ。直径は数メートルから数百メートルの範囲である。

複数のドリーネが近接していると、隣り合ったドリーネどうしは連結する。こうやってできたドリーネよりも大きい穴をウバーレという。このような成因から、上から見た形は単なる円形とは限らず、複雑な形をしていることもある。

ウバーレがさらに溶かされ広がるとポリエが形成される。ポリエの底面積は数百平方キロメートルに及び、人が住むこともある。

ピナクル・カレン・カレンフェルト

地面を覆う岩石のうち一部が溶けずに残ると、その部分だけが地面から飛び出したようになり、岩柱になる。このような岩石をピナクルという。一方で、ピナクルとは逆に、溶食が進んだ岩石の表面には溝が形成される。この溝をカレンという。さらに、多数のカレンが見られる地形をカレンフェルトという。

鍾乳洞

地下で石灰岩の溶食作用が起こり形成される洞窟を鍾乳洞(石灰洞)という。鍾乳洞中には石灰岩が溶けてできた水溶液があるが、この水溶液が沈澱などにより逆に炭酸塩岩を析出することがある。このような作用によって形成される岩石のうち、天井から垂れ下がるようにしてできるものを鍾乳石、地面から生えるように伸びるものを石筍という。

ときおり、鍾乳洞の天井が崩落して、穴ぼこのようになることがある。このようにしてできた穴を、陥没ドリーネという。

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